16年勤めたGoogleを退職しました

本日、2023年5月31日付でGoogleを退職しました。入社が2007年2月5日なので16年ちょっとGoogleで過ごしたことになります。新卒の1社目を3ヶ月で退職した僕にとっては16年は本当に長く感じますね。2007年を振り返ってみると、当時はWeb2.0全盛期で、検索やGmailはありましたがYouTubeは買収直後、ChromeブラウザやAndroidはまだ存在していなかった時代。ストリートビューもまだですね。モバイルもいわゆるガラケー、フィーチャーフォン全盛時代でした。なんだか遠い昔のことみたいですね。入社当時のメモを振り返ると3年くらいいられればいいかな、などと書いてあったので予想よりずっと長くいたんだな、と思います。

ではなぜ辞めるのか。という話は、良かったらLinkedInでの投稿を読んでみてください。退職を受け入れた時の投稿です。その後2週間ほどで最終出社日を迎え、2ヶ月半ほどお休みがあり(いわゆるGarden Leaveというやつですね)、本日は社員としての最終日となります。

退職エントリーを書くのはどうしようかな、と思ったのですが、思えば前回の退職エントリーは16年前で、滅多にない機会かな、と思いますので書いてみることにしました。色々思いつくままに書いてみたいと思います(ちなみに前回の退職エントリーはmixiでした)。

就職できなくて留年、就職浪人しても内定が取れない

話はだいぶ遡るのですが、僕の社会人人生のスタートは、スタートすら切れない、という大きなつまずきから始まりました。そこまで遡るのかよ、と思うかもしれないですが、思いを巡らせると実際そこがスタートなのです。Google社員というとざっくり優秀な人、というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、僕はそのイメージからは随分遠いタイプでした。僕が社内で誰かに負けないものがあるとしたらインターネットをもっと良いものにしたい、という情熱くらいで他はほとんどが平均以下でした。でもまともに仕事に就くことすら出来なかった僕がGoogle検索の改善などを通して実際にインターネットが少しでも良いものになるように働くことが出来たのは最高に光栄だったな、と思います。

あ、話が飛んでしまいました。また少し、いや、だいぶ時代を戻します。

細かく書くととても長くなってしまうので簡潔に書きます。時々Twitterにも書いている通り、正直就活はうまく行きませんでした。1年目の就活では100社くらいは応募したのではないでしょうか。でもどこからも内定をいただけませんでした。それで2単位だけ単位を残し留年、つまり就職浪人したのですが、氷河期が始まったばかりで、2年目はより市場は冷え込み、就活は相当厳しかったですね。それでも1年目同様100社くらいは応募したと思うのですが、2年目も内定を頂くことは出来ませんでした。そこで夏くらいですかね。一般的な就職を諦めて地元の自動車販売会社に応募し、なんとか内定を頂くことが出来ました。

あの時なぜ内定が取れなかったのかは今でも色々考えることがあるのですが、もちろん氷河期だったこともあるとは思いますが、自分が情熱を持ってやりたいことを見つけることが出来なかったことに尽きるのではないかと思います。本当のところ、音楽で生きていきたいという思いはあったのですが、音楽活動をやっていないという矛盾した状態だったので論外でしたね。はは。

新卒1社目、3ヶ月で退職し1ヶ月の無職期間へ

苦労して入った1社目の会社でしたが、研修期間中色々思う所があり、研修期間が終わる3ヶ月で退職することにしました。この辺の事情は書きにくい部分があるので書きませんが、今回の本題にはあまり関係ないのでご容赦下さい。もう少し人間的な生活をしたいな、と思ったことだけ書いておきます。

そして初めての転職活動です。何しろインターネットすらまだ普及していない時代、しかも第2新卒という言葉もない時代です。中途採用=経験者採用だったので、3ヶ月で辞めた人間が受けられる求人がない。それでもめげずに全国紙の火曜日と日曜日の求人欄と、当時リクルート社が出していたB-ing(Bingではない)という週刊の求人誌をチェックする日々。いくつか応募するものの面接にもたどり着けない。なんとか高卒の求人(僕は4大卒)に応募してみるものの、面接で軽く罵倒されたりなんだか理不尽な扱いを受けたりとなかなか厳しい感じでした。

そこでもう一般企業への就職は諦め、法学部を出ていたこともあり、法律事務所か特許事務所を探すことにしました。今となってははっきりとは覚えていないのですが、多分短大卒の女性を想定した求人だったのではないかと思いますが、とある特許事務所の事務職の求人に応募し、採用されました。人生2つめの内定です。この虎ノ門の特許事務所で7年間を過ごすことになります。

会社で働く人生は向いてないんだなあと諦めた25の夜

こうした退職・転職経験からまわりの友人達のような”普通”の社会人、会社人生は向いてないんだな、と、25歳にして仕事人生を諦めました。仕事のためのスキルアップや資格を取るといった方向の努力を一切辞めました。その代わりに何をしたかというと、ギターを再び手にして大学時代に挫折した音楽活動を再開したのです。

あれ、このブログってGoogleの退職ブログのはずでは?と思いながらも続けます。

ここで音楽活動を始めたことがGoogleに繋がるのです。もちろんそんなこと夢にも思いませんでした。1995年です。Googleが誕生したのは1998年なので。

ではなぜ音楽活動がGoogleに繋がるかというと、そこからネットに繋がっていくのですね。好奇心からバンドのホームページを作り始めたのです。1997年だったと思います。その後Photoshopというもので写真を加工できるらしい、とか、とあるグラフィックボードを挿せば映像をリアルタイム編集できる、とか知ってバンドのライブ映像を編集して超小サイズに圧縮してネットに載せてみたり(RealAudioとかだったかと)、まだYouTubeの無い90年代終盤くらいに結構色々していたと思います。それがGoogleに繋がるのですが、この時はあくまでもメインは音楽。ライブ活動とか、CD作ったりとか色々しましたね。四ツ谷の某ライブハウスに出演したり。

でも結局30歳くらいになってさすがにバンドで生きていくのは難しいかもな、と現実を緩やかに受け入れました。ちょうどその頃、ようやく社会というかちゃんと働くことに関心が出てきたんですね。遅いですよね。自分でも遅いとは思うのですが、でも人の成長はそれぞれ、ということで。もちろん特許事務所での仕事はしているのですが、そういう代行業ではなく、事業会社に行きたくなったのです。そこで初めてGoogleを意識したのでした。

Googleとの出会い、Google への思い

Googleとの出会いは、多分2001年だったと思います。Yahoo! Japanの検索エンジンがGoogleになったのです。これは衝撃的でした。探していた情報が出てくるのです(笑)。当時はYahoo!のディレクトリを辿ってサイトをチェックするのが一般的だったと思います。当時、僕も何度も様々なインターネット検索を試してみたのですが常用するようにはなりませんでした。

ところがGoogleはこれまでの検索とは決定的に精度が違うとともに、他のどんなサイトとも違いました。当時の僕の目には多くのサイトがポータルサイトに代表されるようにコンテンツをリッチにして少しでも長くユーザーを滞在させようとしているように見えたのに対し、Googleはトップページには検索窓がぽつんとあるだけでコンテンツは1つもなく、一秒でも早くユーザーをサイトから離脱させようとしているように見えました。その発想がコロンブスのたまご的でかっこいいな、と。

そしてなにやらとても変わった会社らしい、というところにも興味を持ち、凄く憧れたのですが、当時の募集要項を見ると関連業務での7年以上の経験を求めていて、関連業務どころか特許事務しかやっていない僕には受けることすら出来ませんでした。

Googleを受けることは出来なかったので、でも何かクリエイターになりたいな、なれそうだな、と思い、ゲーム会社の法務部特許課に入り、1年半後にウェブの部署に異動することになりました。この辺の経緯も色々あるのですが、長くなるので端折ります。

ゲーム会社でウェブの部署に入り、待望の事業会社でのウェブ関連の仕事です。本当に楽しかったですね。これも細かくは書けないのですが、担当サイトの閉鎖とともにちょっとクリエイティブな仕事からは離れてしまい、色々悩みました。

それで転職活動を始めるのですが、その時も厳しかったですね。氷河期で不本意な就職だったにも関わらず、10年以上経ってもまだ何故そこ(1社目)に入ったのか、聞かれるわけです。いや、そこしかなかったから、とは言いにくいので何か理由をつけると今度はなぜ3ヶ月で辞めたのか、とか、そこからのキャリアが繋がってない、とかなんとか。今では直近2社の経歴しか聞かれないし、もう大丈夫なのですが。氷河期世代で同じようなことで苦労してた、してる方もいらっしゃるのではないですかね。そんな苦労を重ねる中、思いはやはりGoogleに行くわけですね。やっぱりインターネットの最先端を走っている(と僕は思っていた)Googleに入りたい、中を見て体験したい、と思いました。自由でオープンな会社らしい。情報のコントロールとかどうしてるんだろう。とか、好奇心は尽きず。そこで募集要項を見てみるとなんていうことでしょう、経験必要年数が3年になっているじゃないですか。ウェブの部署に来て大体2年と8ヶ月くらい。誤差だな、と。そこで今でも忘れない、リクナビ経由で応募し、無事採用して頂いたというわけです。

ドキドキしながら入社したその1週目から3回終バスで帰ったことは忘れません。

あれから16年

そしてあっという間に16年が過ぎました。本来ならここから書くのが普通の退職ブログなのかもしれないですが、このブログはここで終わろうと思います。Googleでの日々は生々しくてまだ書けないかな。

でも今の心境を少し書いてみます。今回、僕はGoogleにフラれたようなものですが、僕はやっぱりまだGoogleが好きなんですよね。16年も連れ添ったわけです。フラれたから僕も嫌い、とはならないですよね。やっぱり僕は変わらず好きだな、と。

でもね、未練じゃないんです。わかってたんです。僕の中に新しい道に行きたがっている自分がいることを。でもまだやり残したことが沢山あったし、グローバルな仕事はやりがいがあったし、他の仕事にチャレンジするタイミングがなかった。そして何より大好きな会社を離れるって難しいですよね。今回の出来事やプロセスは心地よいものではありませんでしたが、新しいことにチャレンジするには良いタイミングだったのかな、と思います。とても良いきっかけになりました。

ちなみに今回のことは色々な情報が錯綜していましたが、Googleから公式にアナウンスされている通り、ロールの削減の流れで僕のロールもその対象となった、という感じではあります。僕のチームメイトはほとんどいなくなってしまったので。人を見て、というよりは役割を見て、ですかね。

残念な終わり方ではありましたが、でもやっぱり思うのは感謝の気持ちですね。やり残したことが一杯で、本当に心残りだらけなのですが、一方で辞めることがこんなに残念に思う仕事に携われた、というのは本当に会社に感謝しか無いな、と。そもそもまともに仕事に就くことすら出来なかったわけですからね。あんなに入りたいと何年も憧れた会社に入社できて最高に嬉しかったし、自分のようにエリートではなく、情熱だけで勝負してきたような人間を受け入れてくれて嬉しかった。これは上司や同僚のみなさんに感謝。

今後についてですが、何かお話できるようになったらお伝えしたいと思います。色々大変なんだろうな、とは思いますが諦めなければなんとかなるだろう、と楽観的に考えていますが、さて、どうなることか。少しワクワクします。

と、いうわけで、Googleでやってきたことには一言も触れていませんが、そろそろ終わりたいと思います。ちょっと長かったですが、最後まで読んで頂ければ退職にあたっての思いはなんとなく感じ取って頂けたのではないかと思いますがいかがでしょう?

最後に、Googleで出会った同僚のみなさん、スタッフのみなさん、お客様、ユーザーのみなさん、遠くから見守ってくださったみなさん、ありがとうございました!

これからも感謝の気持を忘れず、そしてインターネットが少しでも良い場所となるような活動をしていきたいと思います。

これからもよろしくお願いします。

本当に、本当にお世話になりました!名残惜しい。
みなさんもお元気で!また、いつかどこかで!!

Googleの思い出深い景色

最後にオフィスからの眺めを1枚。自分が写ってる写真は選べなかった。
夕陽とかにしようかとも思ったのですが、夕陽の時間帯に反対側の東京タワー方面に
現れるいわゆるビーナスベルトと呼ばれる空のグラデーションが好きでした。地味かなw

というわけで、本当にお世話になりました!!

さよならGoogle!

金谷武明 (Twitter / Instagram / LinkedIn

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