Sunoで昔の自作曲を蘇らせてみた。鼻歌が10分で完成形に

いつの頃からか、日本でも11月の最終週といえば「ブラックフライデー」としてセールが行われることが定着してきましたね。ガジェットやテック系の製品だけでなく、最近はサブスクリプションサービスも対象になることが多いため、毎年この時期は何か買ってしまう自分がいます(笑)。

今年は、以前から気になっていた音楽生成AIツール「Suno」のサブスクリプションに登録してみました。

Sunoとは

Sunoは、一言でいうとユーザーが入力したテキストの指示(プロンプト)に基づいて、歌声(ボーカル)を含む楽曲全体を自動で生成するAI音楽作成ツールです。作詞、作曲、編曲、そして歌唱までもAIが担うため、専門的な知識や機材がなくても、アイデアをすぐに具体的な音楽作品として形にできます。

今回、僕がやりたいのは「ゼロからAIに曲を作らせる」ことではなく、「昔自分が作った曲を、AIの力で現代に蘇らせる」こと。後半でそのプロセスを紹介しますが、これがなかなか面白い体験でした。

Suno:https://suno.com

自分と作曲について

僕が昔バンドをやっていたことは色々なところで話しているので知っている方もいらっしゃるかと思いますが、僕の作曲の話はあまりしたことがないかもしれません。少しだけ、自分と作曲の関わりについて触れておきます。

バンドを始めた高校生の頃から曲作りをスタートし、30歳を過ぎる頃まで、作曲を続けていました。ちゃんと「曲」と呼べるものは、トータルで数十曲くらいでしょうか。さすがに100曲には届かないかな、というくらいです。

僕は鍵盤などの楽器が得意なわけではないので、作曲は基本的にギターで行っていました。なのでデモテープ(テープに限らないですが…)などを作るのは大変なんですがバンド時代はメンバーに聴かせるためのデモテープを作る必要があったわけです。

そのためデモテープ作りには工夫が必要でした。覚えている方もいるかもしれませんが、YAMAHAの「QY10」というVHSテープサイズくらいの伴奏作成マシンや、KORGの自動伴奏機能付きのマシンなどを使っていました。コード進行を入力してパターンを選ぶと、ドラムとベースが鳴ってくれる。それをMTRに録音して、さらにギターとボーカルを重ねる…そんな感じでデモテープを作成していました。

パソコンを使うようになってからは「Band-in-a-Box」という自動伴奏ソフトにお世話になりました。自分が歌わなくていいならそれでも構わなかったので、初音ミクが登場したときも興味はあったのですが、初期のミクはMacに対応していなかった記憶があり、当時は導入を見送りました。

そして2025年。今回Sunoを使うことで、僕の曲にAIがどんなアレンジを加え、どんなボーカルを乗せてくれるのか。期待が高まります。

ブラックフライデーで40%オフという誘惑に負け、年額プラン(Pro Plan)に登録。Pro になると、無料プランよりも生成できる曲数が大幅に増え、最大8分のオーディオアップロードやカバー機能、各種編集ツール、そして商用利用の権利などがフルで使えるようになります。

Sunoで昔の曲を再現してみた

ということで、さっそく「昔作った曲の再現」にチャレンジしてみました。ざっくり以下の3ステップです。

  1. Audio Input で鼻歌を録音する
  2. Cover モードで曲として蘇らせる
  3. 各種パラメータを調整する

細かく説明します。

  • Audio Inputで録音する:まずは素材作りです。自作曲のメロディをSunoにインプットする際、現時点では音符やMIDIを直接打ち込む機能はないので、Sunoの録音機能を使って鼻歌的にアカペラでメロディを入力します。SunoのAudioレコーディングモードでは、Proプランだと最大8分までの音声を録音/アップロードできます。家族に配慮して小さい声で歌ったため、高い音が出しにくく再現性に不安がありましたが、とりあえずワンコーラス分を録音してみました。もちろん、この時点の音声はとても人様に聴かせられるものではありません(笑)。
  • Remix(Cover)機能を使う:録音したトラックをもとに Remix > Cover を選びます。自分のメロディはそのままに、スタイルや伴奏を作り直してくれるモードです。
  • パラメータの指定:画面上で曲調など各項目を設定していきます。ここで歌詞を変えることもできます。項目は以下のような感じです。
    • Styles:アレンジのスタイルを指定します。「Rock」「Ballad」など、テンポやサウンドの雰囲気をテキストで入力します。
    • Advanced Options:より詳細な設定項目です。
      • Vocal Gender:男性(Male)、女性(Female)の指定がスイッチ一つで可能です。今回は女性ボーカル版を作りたいのでFemaleを選択しました。
      • Lyrics Mode:歌詞を自動生成するか手動かを選べます。今回は自分の曲なので「Manual」にして、記憶を頼りに歌詞を入力しました。覚えていない部分は鼻歌に合わせて適当に埋めています。
      • Weirdness:直訳すると「奇妙さ」ですが、AIの創造性の度合いのようなものです。数値を上げると意外性のあるアレンジになります。
      • Style Influence:スタイル指定(Styles)にどれくらい忠実にするかを調整します。
      • Audio Influence:元の鼻歌(オーディオ)にどれくらい忠実にするかを調整します。

実際にやってみて感じたこと

生成ボタンを押して待つこと数十秒。 自分の入れたメロディと歌詞に沿って、Sunoが見事に曲を生成してくれました。一度に同時に2パターンの曲を生成してくれます。

ただ、課題もありました。現状の仕様では「コード進行」を細かくコントロールすることはまだ難しく、基本はメロディやプロンプトからAIがコードを推測しているため、自分が意図していた世界観とは異なるコード解釈をされてしまうパートもありました。

このあたりは、ギターの弾き語りでも伴奏を付けて録音して入力すれば、コード感も伝わって回避できるかもしれません。声だけ(アカペラ)での入力には、やはり限界があるようです。でも「ここで”A → A7″」みたいなのはうまく行ったところもあります。

著作権について

ここで一応著作権についても触れておきたいと思います。

Sunoは音楽クリエイターに多くのメリットをもたらす一方で、大手レーベルが学習データをめぐって提訴したり、最近ではワーナー・ミュージックがSunoとライセンス契約を結ぶなど、著作権をめぐる動きも活発です。

私自身、著作権には最大限の尊重を払う所存です。現時点では、自分が制作する曲のサポートとして利用することを考えているため、権利侵害の可能性は低いと考えていますが、伴奏や編曲に関する著作権などは、これから法的な整備が進められていくでしょう。今後も、関連する訴訟やルールの形成を注意深く見守っていきたいと思います。

というわけでデモ公開

今回軽く作ってみた3曲のうち、1曲を公開してみました。

この曲は、たぶん大学1年生くらいのときに作ったもので、その後バンドで演奏されることもなく眠っていた曲です。 女性ボーカル版にしてみましたが、いかがでしょうか。曲としての好き嫌いはあるでしょうが、「鼻歌程度の録音から、ほんの10分程度でここまでできた」という事実に、僕は正直震えました。

今後やってみたいこと

今回の実験で手応えを感じたので、今後は以下のようなことをやってみたいですね。

  • ストックしてある過去の曲をどんどん形にしてアーカイブ化する
  • 自分の声に近づける(現在はまだ公式機能ではありませんが、世界中で試行錯誤が行われているようです)
  • 少し先の野望として、「Sora 2」などの動画生成AIを利用して、この曲にPVをつけてみる

AI時代の音楽制作、まだまだ楽しめそうです。

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